
2025年のヒューストン・ロケッツは、もはや「再建中」のチームではない。
ケビン・デュラント(KD)というレジェンドの存在を中心に、
若手が次々と自分の役割を見つけ、チームとして形を作りつつある。
その過程には、敬意を持って語るべき成長と戦術的進化がある。
1. ダブルビッグの再構築
ロケッツが今季に入って明確に打ち出したのが、
アルペレン・シェングンとスティーブン・アダムスによる**「ダブルビッグ」構造**だ。
二人を同時に起用するこの布陣は、
単なるサイズアップではなく、役割の分業による最適化として機能している。
- シェングン:クリエイティブなハイポスト型センター。パスと空間把握で攻撃を設計。
- アダムス:リバウンド、スクリーン、フィジカルの要。守備の安定軸。
この組み合わせにより、ロケッツはテンポを落とさずに守備とフィジカルを両立するチームへと変化した。
(参考:The Dream Shake, “Double Big Trouble: Rockets Find Balance with Sengun and Adams”, 2025年3月)
さらに興味深いのは、アダムスがかつてOKCでKDとプレーしていた点だ。
KDの“動きを活かすスクリーン”や“スペースの作り方”を熟知しているため、
このコンビネーションは既に完成度が高い。
2. KDがチームの「司令塔」へ
今季のKDは、単なるスコアラーではない。
プレーの流れを読み、若手に指示を送り、
時には「Go!」の手信号でアメン・トンプソンを鼓舞する。
試合中に彼が見せる「コーチモード」のKDは、
チームの精神的支柱としての成熟を象徴している。
スタッツに残らないリーダーシップこそ、
若手が安心して自分を出せる最大の理由だ。
(参考:NBA.com Season Preview – Houston Rockets 2025-26)
3. 若手の台頭 — アメン・トンプソンとリード・シェパード
アメン・トンプソン
ロケッツのエンジン。
圧倒的なドライブ力と守備範囲でチームを動かす存在だ。
外のシュートが安定すれば、NBAでも屈指のオールラウンドプレイヤーになれる。
身体能力だけでなく、試合全体を読む知性も成長しており、
KDが“信頼して任せる”数少ない若手のひとりでもある。
リード・シェパード
ルーキーながら、判断の速さ・守備IQ・3P精度の高さが光る。
派手さはないが、チームの呼吸を整える選手。
彼の存在がベンチユニットに安定をもたらしている。
(参考:Houston Press, “Five Keys to the Rockets’ Season”, 2025年10月)
4. シェングン — ロケッツの心臓
個人的な見解だが、
今のロケッツで最も“バスケットボールを理解している選手”はシェングンだと思う。
- ハイポストからの視野の広さ
- KDとの呼吸の合ったパスワーク
- そして時折見せる、ヨキッチを思わせるゲームメイク
アダムスが守備で支え、KDが外で引力を作る中、
シェングンが攻撃のリズムを作る。
この3人のバランスこそ、現在のロケッツの強さの核だ。
5. 勝ち方と課題
勝ちパターン
- KDが攻撃の重心を整える
- シェングンが創造的に展開
- 若手が走ってテンポを上げる
- アダムスがリムとリバウンドで支える
この構図が噛み合った試合は、
強豪キャブス相手にも見られたように内容で勝つ形を作れている。
課題
- テンポ重視のためターンオーバーが多い
- アメンの外の精度が安定しない
- 若手の波が試合によって激しい
だが、これらは若いチームが成長している最中の健全な課題でもある。
6. 結論 — 見る価値のあるチームへ
今季のロケッツは、
若手の勢いとベテランの知恵が見事に融合しつつある。
- KD=魂
- シェングン=頭脳
- アメン=心臓
- シェパード=血流
- アダムス=背骨
このチームは“勝てる骨格”をすでに手にしている。
再建からの脱却。
そして、新しいロケッツの時代が静かに始まっている。
参考文献・ソース
- NBA.com, “2025-26 Season Preview: Houston Rockets”
- ClutchPoints, “Rockets’ Double Big Lineup with Alperen Şengün and Steven Adams”
- The Dream Shake, “Prepare for Houston’s Double Big Trouble”
- Houston Press, “Five Keys to the Rockets’ Season”
- Basketball-Reference.com, 2024-25 Houston Rockets Team Stats

